電子カルテ情報共有サービスとは|3文書6情報と接続準備の5手順

電子カルテ情報共有サービスで共有される3文書6情報の中身、FHIRが技術基盤に採用された理由、医療機関側で必要になる接続準備の5ステップを解説。全国運用開始は令和8年度冬頃の予定で、現在は本番利用がモデル事業参加施設に限定されている点、処方情報の扱いが変更された点まで最新情報で整理します。

「電子カルテ情報共有サービスに、いつ・どこまで対応すべきか」——医療機関の情報システム担当者や事務長から寄せられる相談です。制度の存在自体は知っていても、共有される情報の粒度や、自院の電子カルテがそのまま使えるのかどうかまでは把握しきれていない、という声を耳にします。

本記事では、厚生労働省の公表資料をもとに、電子カルテ情報共有サービスの構造・対象データ・運用スケジュール・現場側で必要になる準備を、実務担当者が判断できる粒度で整理します。

電子カルテ情報共有サービスの位置づけ

電子カルテ情報共有サービスは、医療機関間で患者情報を安全に共有するために厚生労働省が構築を進める全国共通の医療情報プラットフォームです。運用主体は社会保険診療報酬支払基金と国民健康保険中央会が共同で組織する医療保険情報提供等実施機関で、令和7年2月から全国10地域でモデル事業が始まっています(出典: 厚生労働省「電子カルテ情報共有サービス 概要案内 2.1.0版」ほか)。

現時点では、まだ一般の医療機関が利用を開始できる段階にはありません。 本番環境の利用はモデル事業の参加施設に限定されており、システムベンダ向け技術解説書2.1.0版にも次のように明記されています。

次版が公表されるまでの間は、モデル事業以外において、本書に基づく実装・導入は控えてください。

全国的な運用開始は令和8年度冬頃が目標とされています。したがって現段階では、導入そのものよりも、自院の電子カルテがFHIR対応可能かを確認し、対応方針を決めておく準備期間と捉えるのが適切です。

導入の狙いは4点に整理されます。救急・転院時における患者情報の即時共有、重複検査・重複処方の抑制、患者本人のデータアクセス権の拡張、そして医療分野全体でのデータフォーマット統一です。単なる病院間の情報連携にとどまらず、患者個人のPHR(Personal Health Record)とも接続される設計になっています。

「医療情報プラットフォーム」との関係

政府文書では「全国医療情報プラットフォーム」という上位概念も併用されます。こちらは電子処方箋・レセプト情報・予防接種履歴なども含む広い枠組みで、電子カルテ情報共有サービスはその中で、電子カルテ由来のデータを扱う中核コンポーネントに位置します。名称が似ているため実務では混同されがちですが、対象データの範囲が異なる点に注意が必要です。

共有対象「3文書6情報」の中身

共有の対象になるデータは、通称「3文書6情報」と呼ばれる構成に整理されています。文書と情報を分けている理由は粒度の違いで、文書は「特定の場面で発生する成果物」、情報は「時点や場面を問わず参照される要素」という区分けです。

3種類の文書

文書内容主な発生場面
診療情報提供書紹介状として利用される文書病診連携・転院時
退院時サマリ入院時の診療記録の要約退院時、逆紹介時
健診結果報告書健診・検診の結果健診機関からの共有

6種類の情報

情報内容
傷病名現在の疾患・既往歴
アレルギー情報アレルゲン・反応履歴
感染症情報感染症の罹患履歴
薬剤禁忌情報使用禁忌となる薬剤
検査情報検体検査の結果
処方情報過去の処方履歴

これら全てがFHIR形式でやり取りされます。テキスト自由記述ではなく構造化データとして流通する点が、従来の紹介状FAX運用との根本的な違いです。

「6情報」の実装は現在5情報です

政策用語としては「3文書6情報」が使われ続けていますが、実装上の扱いは変更されています。第26回 医療等情報利活用ワーキンググループ(令和7年12月)で、処方情報については電子カルテ情報共有サービスにおける診療情報提供書からの抽出を行わず、電子処方箋管理サービスに登録された情報を用いる方針が決定されました。

あわせて「アレルギー情報」と「薬剤禁忌情報」が「薬剤アレルギー等」「その他アレルギー等」に再編されており、実際に本サービスが扱う臨床情報は次の5種類です。

実装上の臨床情報補足
傷病名ICD10対応標準病名マスターの病名管理番号を使用
感染症梅毒STS・梅毒TP抗体・HBs・HCV・HIVの5項目
薬剤アレルギー等YJコード(15桁)を使用
その他アレルギー等J-FAGYアレルゲンコードを使用
検査43項目(血算・肝機能・腎機能・脂質・電解質等)

FHIR実装ガイドの正式名称も「JP-CLINS(2文書5情報+患者サマリー FHIR実装ガイド)」です。資料や提案書で「6情報に処方が含まれる」と記載する場合は、この変更を補足しておくと正確です。

なお、診療録(SOAP)に記載した所見や業務上のメモは共有対象外です。データの保存期間も情報種別ごとに異なり、診療情報提供書・退院時サマリーは180日、傷病名やアレルギー等は5年、検査は1年または直近3回分とされています。

なぜFHIRが技術基盤に選ばれたのか

技術規格としてFHIR(Fast Healthcare Interoperability Resources)が採用された背景には、次のような要件がありました。

要件FHIRが満たす特性
国際的な相互運用性HL7 Internationalが管理する国際標準
Webシステムとの親和性JSON形式・REST APIで実装可能
国内事情への適合JP Coreプロファイルで日本の実務に整合
将来の拡張性PHR・臨床研究・AI活用への転用余地
ベンダー中立性仕様が公開されており特定製品に依存しない

FHIRの技術的な概要は別記事で扱っています。

関連記事:FHIRとは?医療データ標準化で何が変わるのか

サービスの流れをつかむ

医療機関側とサービス側のやり取りは、大きく3ステップに分けられます。まず、医療機関の電子カルテがFHIRデータを電子カルテ情報共有サービスにアップロードします。次に、別の医療機関が患者同意の下でそのデータを参照します。並行して、患者本人はマイナポータル経由で自分のデータを閲覧できます。

[A病院 電子カルテ] ──FHIR──▶ [電子カルテ情報共有サービス] ◀──FHIR── [B病院 電子カルテ]


                                 [マイナポータル]


                                    [患者本人]

医療機関の担当者が意識するのは主に「アップロード」と「参照」ですが、その裏でデータ標準化・患者同意管理・アクセスログ保全といった実装が必要になります。ここが自院の電子カルテ内だけでは完結しない領域で、後述する対応手順の中心テーマです。

運用スケジュールの読み方

厚生労働省が公表しているロードマップに沿うと、対象は段階的に拡大される予定です。

時期内容
令和7年2月〜全国10地域でモデル事業を順次開始
令和8年6月システムベンダ向け技術解説書 v2.1.0(検証用)公開
令和8年9月頃接続検証環境・本番環境のリリース
令和8年10月頃〜モデル事業での再検証
令和8年度冬頃全国的な運用開始(目標)
令和9年度以降クラウド間連携の接続テスト・利用開始
令和12年12月まで政府目標として電子カルテ普及率約100%(法定)

当初は令和7年度中の本格稼働が予定されていましたが、モデル事業で判明した課題への対応のため延期されています。実務上は「令和8年度末から令和9年度にかけて本格化する」と捉え、それまでに自院の電子カルテのFHIR対応可否と、ベンダーの対応スケジュールを確認しておく段取りが安全です。

なお、令和12年12月31日までに電子カルテ普及率を約100%とすることは、令和7年改正の地域医療介護総合確保法に規定されています。ただしこれは政府に課された目標であり、個々の医療機関に導入を義務づけるものではありません。厚生労働省標準規格についても「医療機関等に対し、その実装を強制するものではない」と明記されています。

医療機関側で必要になる準備

対応は一気に完了する類のものではなく、5段階に分けて進めるのが現実的です。

ステップ1: 現状の把握

自院の電子カルテがFHIR出力に対応しているかを確認します。ベンダーから公式に告知されているケースもあれば、次期バージョンで対応予定という段階のケースもあり、状況はまちまちです。院内の情報システム担当と、ベンダー側の窓口担当の双方に、書面で確認しておくのが確実です。

ステップ2: ベンダーとの協議

対応時期・追加費用・アップグレード手順を、電子カルテベンダーと合意します。ここで「対応します」の中身が、電子カルテ本体でのフル対応なのか、中継システム(FHIRアダプタ)経由なのかで、後工程の工数が大きく変わります。

ステップ3: 運用体制の整備

情報共有の場面ごとに、患者同意を取得するプロセスを設計します。従来の包括同意で足りるのか、都度同意が必要かは、共有対象データと目的によって判断が分かれる部分です。並行して、受付・診療スタッフ向けのマニュアル整備も避けて通れません。

ステップ4: 接続テスト

厚生労働省側のテスト環境で接続確認を行い、実データを想定した検証を実施します。文書のフォーマット差異や項目マッピングのずれが出やすい工程で、この段階で発覚した問題を潰しておくことが本番運用の安定性に効きます。

ステップ5: 本番接続と加算申請

本番運用を開始し、要件を満たせば電子的診療情報連携体制整備加算の届出を進めます。旧・医療DX推進体制整備加算は令和8年度改定で廃止されているため、届出は新加算の様式で改めて行う必要があります。

関連記事:医療DX推進体制整備加算は廃止|後継加算の点数と要件

つまずきやすいポイント

現場で相談を受ける中で、繰り返し話題にのぼる論点が3つあります。

既存電子カルテのFHIR非対応

古い電子カルテはそもそもFHIR出力の設計になっておらず、ベンダーのアップデート時期を待つほかない状況になります。老朽化が進んでいる場合は、更新のタイミングでFHIR対応版に切り替える方が総コスト的に有利なケースが少なくありません。

同意取得プロセスの再設計

患者情報を院外と共有する以上、同意プロセスは制度対応の要になります。ここが従来の紙同意運用のままだと、共有の範囲・目的・撤回可能性の説明責任を果たしきれないケースが出てきます。ダイナミックコンセント(利用場面ごとの都度同意)を実装するかどうかも、この段階で検討することになります。

スタッフ運用の切り替え

受付や情報システム担当者の業務フロー変更に、想像以上の時間がかかります。特にマニュアル未整備のまま運用を開始すると、共有漏れやアクセスログの取り扱いミスにつながりやすい領域です。切り替え時期は、繁忙期を避けて設定するのが無難です。

ヘルスインタビューでの対応

ヘルスインタビューは、電子カルテ情報共有サービス対応の実務負荷を下げるためのデータ基盤機能を備えています。

課題ヘルスインタビュー側の対応
FHIR対応データ出力を標準でFHIR形式に準拠
同意取得ダイナミックコンセントで場面別の同意管理
監査対応改ざん検知可能なアクセスログ保全
運用コストクラウド提供のため追加インフラ不要

なお、電子カルテ情報共有サービスとの直接接続そのものは、既存電子カルテベンダー側との協業で実現されます。ヘルスインタビューはその手前で発生する構造化データ生成・同意管理・監査ログの領域を担う位置づけです。

導入検討にあたっての詳細は、ヘルスインタビューのサービスページ または FHIR電子カルテ連携ページ をご参照ください。

よくある質問

Q. 電子カルテ情報共有サービスへの対応は必須ですか?

現時点では任意です。厚生労働省標準規格は「医療機関等に対し、その実装を強制するものではない」とされています。ただし全国運用開始後は診療報酬・補助金の両面から対応が促される見込みのため、早期の情報収集が有利です。

Q. 既存の電子カルテがFHIR非対応ですが、どうすればよいですか?

中継システム(FHIRアダプタ)を導入することで対応可能です。ヘルスインタビューは主要電子カルテとの連携実績があり、ケースバイケースで最適な連携方式をご提案します。

Q. 電子カルテ情報共有サービスとマイナポータルの関係は?

電子カルテ情報共有サービスに蓄積されたデータは、患者様がマイナポータル経由で閲覧できる仕組みです。患者のPHR活用を支える基盤となります。

Q. 患者への同意取得はどうすればよいですか?

従来の包括同意では不十分な場合があります。ダイナミックコンセントで利用都度の同意を取得することが、法的リスク回避の観点で推奨されます。

Q. 費用はどのくらいかかりますか?

対応内容により大きく異なります。ヘルスインタビューは初期費用0円で、FHIR対応機能が標準搭載されています。料金は医療機関の規模・ご利用機能により異なるため、個別にお見積りしています。

Q. 対応によるメリットは何ですか?

電子的診療情報連携体制整備加算の算定要件の一つを満たせるほか、紹介/逆紹介の効率化、重複検査削減によるコスト低減などが期待できます。なお同加算については、一定要件を満たす地域医療情報連携ネットワークの活用でも代替が認められており、電子カルテ情報共有サービスへの参加が必須というわけではありません。

まとめ

電子カルテ情報共有サービスは、単発の機能追加ではなく医療機関の情報基盤そのものに影響する制度です。FHIR対応・同意管理・接続テストと、影響範囲は電子カルテ単体には閉じません。

対応方針の決定にあたっての最初の一歩は、自院の電子カルテがFHIR出力に対応しているかを、ベンダーに書面で確認することです。ここが定まると、その後の予算・工数・時期の見通しが立ちやすくなります。

具体的な検討段階では、医療機関向けのお問い合わせ からご相談ください。

ヘルスインタビューの詳細は、資料で

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