ダイナミックコンセントとは?AI時代の医療データ同意取得の新しい仕組み

ダイナミックコンセントは、AI利用の瞬間に患者のスマホで都度同意を取得する新しい同意取得の仕組み。個人情報保護法・第三者提供リスク・包括同意の限界を解消する、医療機関のための合法なデータ活用基盤を徹底解説。

「生成AIをカルテ業務に取り入れたい」「治験や共同研究にデータを出せる仕組みを作りたい」——医療機関がAI・データ二次利用の議論を始めると、法務・情報システム部門から必ず投げ返される論点があります。既存の入院時包括同意で、本当にカバーできているのか、という問いです。

2022年改正の個人情報保護法は、医療機関が保有するカルテ情報を製薬会社・研究機関・AI開発ベンダー等の第三者に提供する際、患者ごとに具体的な同意を取ることを求めています。入院時に一度だけサインを取る従来運用と、この要件との間には距離があります。本記事では、その距離を埋めるための仕組みとして議論が進むダイナミックコンセントを、法制度・実装・現場運用の三方から整理します。

ダイナミックコンセントとは何か

ダイナミックコンセント(Dynamic Consent、動的同意)とは、医療データが外部で利用される「その都度」、患者のスマートフォンに通知を送り、利用目的・提供先・データ範囲を明示した上で個別に同意を得る仕組みを指します。入院時・初診時の一括同意を出発点にする従来運用とは、時間軸の置き方が根本的に異なります。

従来の包括同意との時間軸の違い

包括同意は「入院時に将来を先取りして同意を貰う」構造です。これに対しダイナミックコンセントは「利用が発生する時点で、利用内容を提示して同意を貰う」構造になります。前者は事前に予測できる範囲でしか運用できず、後者は事後に発生した利用にも柔軟に対応できるという性格の違いがあります。

同意の粒度と撤回可能性

もう一つの相違点は粒度です。ダイナミックコンセントでは、AI診療補助・研究提供・製薬会社への匿名化提供といった利用の種類ごとに個別の可否を選べる設計が前提になります。同意した後でもマイページ等から撤回できる導線を、システム側で常時開放しておくのが特徴です。

なぜ包括同意では実務が回らないのか

「これまでの包括同意でも問題なく運用してきた」という声は少なくありません。ここでは、AI・データ二次利用のフェーズに入ったときに、包括同意のどこがボトルネックになるかを分解します。

個人情報保護法(2022年改正)が要求する水準

第27条は、第三者提供にあたって本人の同意を求めており、実務上は提供先・提供目的・提供データ範囲を具体化した同意である必要があるとされています。さらに第25条は第三者提供の記録・保存を、第29条は本人の求めに応じた撤回対応を、第30条は提供先に関する通知を、それぞれ医療機関の義務として位置づけています。

条文求められる対応包括同意で満たしにくいポイント
第25条第三者提供の記録・保存紙保管・複数部署管理で追跡困難
第27条明確かつ具体的な同意「研究・教育等」の包括表現では不十分
第29条本人の求めに応じた撤回書面撤回フローがなく実質機能しない
第30条提供先の名称等の通知提供先が事前確定しないケースに未対応

3省2ガイドラインが求める運用体制

医療情報システムの安全管理に関する3省2ガイドラインは、委託先の監督・第三者提供の記録・アクセスログ管理・インシデント対応体制の整備を求めています。「同意取得はしたが、その後どう使われたかの記録は残っていない」という状態は、このガイドラインの求める水準からずれてしまいます。

リスクの所在という論点

現行の包括同意ベースの運用では、データ提供にまつわる法的・倫理的リスクの多くが医療機関側に集約されます。患者から「知らないうちに提供されていた」と申し立てを受けた場合、医療機関がその同意の妥当性を立証しなければならない構造です。ダイナミックコンセントは、利用の都度に患者本人が判断する構造に置き換えることで、この責任分担を組み替える設計思想と言えます。

包括同意とダイナミックコンセントを比較する

論点ごとに両者の性質を並べると、どこが本質的な差なのかが見えやすくなります。

論点従来の包括同意ダイナミックコンセント
同意を取る時点入院時・初診時に事前一括利用発生時に都度
提供先の明示「研究・教育等」など包括表現具体的な機関名・企業名で提示
撤回導線書面申請・受付経由スマホから即時操作
履歴の保全紙の同意書を院内保管デジタル履歴を暗号化保管
監査対応対象患者を都度手作業で抽出提供先・目的別に検索抽出
患者の関与受動的(署名して終わり)主体的(自分のデータの行き先を把握)

差の本質は「同意の粒度」と「同意後の可視性」にあります。包括同意はいったん取ってしまうと、その後にデータがどう扱われたかを患者本人から見えにくい状態が続きます。ダイナミックコンセントは、利用の都度に患者側の視点に接続を戻す設計です。

ダイナミックコンセントの動作フロー

ここでは、ヘルスインタビューを例に、実際にどのような順序で処理が流れるかを整理します。

患者側から見た動線

医療機関側でAI利用や第三者提供のイベントが発生すると、患者のスマートフォンにプッシュ通知が届きます。通知を開くと「どのデータを・誰に・何の目的で」提供するかが表示され、患者は同意/不同意を選択します。同意した場合のみ、当該データがシステム経由で提供先に流れる設計です。

医療機関側から見た運用

医療機関側は、AI機能や第三者提供のリクエストを実行した段階で、患者に通知が送られたこと・同意結果が戻ってきたことを一連のログとして確認できます。同意が得られない場合、当該データは処理対象から除外されるため、医療機関側で個別に判断する負担が減ります。

保全される情報

同意履歴には、対象患者・データ内容・提供先・利用目的・日時が紐付いた形で残ります。この履歴は監査対応や、患者・第三者からの照会にそのまま活用できます。ヘルスインタビューの場合、独占的特許を持つブロックチェーン基盤上でこの履歴を管理し、改ざん不能・複製不能な形での保全を実装しています。

導入検討時に押さえておきたい論点

「良さそうだから入れる」で進めると運用で躓きます。医療機関の情報システム・法務・現場のいずれからも異論が出にくくなる論点を、事前に潰しておくのが安全です。

高齢患者・付き添い患者への代替導線

スマートフォンを日常的に使わない患者層への配慮は必須です。家族・代理人への通知転送、あるいは従来の書面同意との併用フローを、システム設計と院内オペレーションの両面で用意しておくのが現実的な出発点になります。

電子カルテとの接続方式

同意取得の裏側でデータをやり取りする以上、電子カルテとの接続方式は避けて通れません。国際標準規格FHIRに沿って構造化データでやり取りする方式か、独自プロトコルによる接続かで、将来の拡張性が大きく変わります。FHIRについての詳細は別記事にまとめています。

関連記事:FHIRとは?医療データ標準化で何が変わるのか

監査ログの取り出し可能性

同意履歴が「取れているが取り出せない」状態では、実務では機能しません。監査対応・第三者検証・患者本人からの照会に対して、どのような形式でログを出力できるかを、選定段階でベンダーに確認しておくのが望ましいポイントです。

医療DX推進体制整備加算との関係

ダイナミックコンセントの導入は、医療DXの体制整備の一部として位置づけられる余地があります。加算算定の可否は個別の状況次第ですが、導入計画を作る段階で、加算要件との突合を並行させておくと、投資判断の材料が揃いやすくなります。

海外での実装と国内の動向

ダイナミックコンセントは海外で先行して議論・実装が進んできた領域です。国内での位置づけを見る前に、参照点となる事例を整理します。

英国 UK Biobank

英国の大規模ヘルスケアコホート研究「UK Biobank」は、参加者50万人規模のデータを扱っています。研究利用の目的が新たに追加される都度、参加者に対して同意を更新できる設計を採用しており、ダイナミックコンセント運用の代表例として参照されます。

EU GDPR下での運用

EUの一般データ保護規則(GDPR)は、同意の具体性・撤回可能性を厳格に求めているため、医療データを扱うプロジェクトではダイナミックコンセントに近い設計がスタンダードになりつつあります。

国内の位置づけ

国内では、包括同意運用が長く続いてきた背景から、ダイナミックコンセントの実装事例はまだ限定的です。AIBTRUSTのヘルスインタビューは、独占的特許を保有するブロックチェーン基盤と組み合わせる形で、医療機関がこの仕組みを実運用に載せられる状態を目指して開発されています。

AIBTRUSTでの実装アプローチ

ヘルスインタビューでは、ダイナミックコンセントを単独機能ではなく、FHIR準拠のデータ流通・情報返却・監査ログ管理と一体で提供しています。医療機関側は既存の電子カルテを改修せず、クラウド経由での接続で運用を開始する構成です。

同意取得後のデータは、標準規格FHIRで研究機関・製薬会社等に流通します。データ提供の対価としての情報返却(患者・医療機関への還元)を組み込む場合も、その処理過程が同意履歴と紐付いた形で残ります。

導入を検討する段階では、貴院の患者層・診療科構成・電子カルテのバージョンを踏まえた個別設計が必要になります。詳細はヘルスインタビューのサービスページ、もしくはFHIR電子カルテ連携ページで確認できます。

現場で聞かれることの多い質問

商談・導入検討の場で、実際に医療機関側から寄せられる質問のうち、判断に直結するものを整理します。

Q. ダイナミックコンセントを導入すると、患者の同意取得が煩雑になりませんか?

実際は逆で、包括同意で「よく分からないまま署名」していた状態から、患者が自分の情報の行方を具体的に把握できるため、満足度は向上します。通知はスマホでワンタップなので、手間も最小限です。

Q. 患者がスマホを持っていない場合はどうなりますか?

ご家族・代理人の方にも通知を送る設定が可能です。また、スマホ未所持の患者については、従来の同意書運用を併用することも可能です。

Q. 同意を撤回された場合、既に提供したデータはどうなりますか?

撤回時点以降の利用は停止されます。既に匿名化して提供済みのデータについては、個人情報保護法上の制約に従って適切に対応します。

Q. 同意取得の記録は誰が管理するのですか?

ヘルスインタビューのブロックチェーン基盤(独占的特許保有)が、改ざん不能な形で保管します。医療機関はいつでも監査・第三者検証のためのログを取り出せます。

Q. ダイナミックコンセントの導入にシステム改修は必要ですか?

既存の電子カルテを改修する必要はありません。ヘルスインタビューをクラウドサービスとして利用いただくことで、既存環境を維持したまま導入できます。最短2週間で運用開始が可能です。

Q. 医療DX推進体制整備加算の算定に影響しますか?

ダイナミックコンセントは、医療DXの要素要件の一部を満たすシステム構成です。具体的な算定要件適合性は、貴院の状況に合わせて個別にご案内します。

まとめ

ダイナミックコンセントの本質は、同意取得のタイミングを「入院時の一括」から「利用発生時の都度」に移し、患者本人がデータの行き先を把握しながら判断できる構造に組み替えるところにあります。個人情報保護法の第27条・第29条・第30条が求める水準に、実運用として応える現実解の一つです。

導入検討にあたっては、電子カルテ接続方式・高齢患者への代替導線・監査ログの取り出し可能性を、選定段階で潰しておくと定着しやすくなります。自院の患者層・診療科構成に即した設計相談は、医療機関向けのお問い合わせからご連絡ください。

ヘルスインタビューの詳細は、資料で

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